モルモットの鳴き声と行動

こんな奴

社会生活の中でモルモットは様々な行動表現を示します 〔Bradley 2001〕。これらの行動を理解することでモルモットの考えがよく分かり、コミュニケーションをはかってスキンシップが上手くとることができます。

行動による意思表示

軽く押す (Nudging: ナッジング) / 頭突き(Head butting: ヘッドバッティング)

モルモットは飼い主である人や同居個体への合図として、遊びに誘う、食事の要求、優勢を示すために鼻や頭で相手を押す行動が見られます。そして、怒りのために相手を強く頭突きをすることもあります。

鼻に触れる (Nose touching: ノーズタッチング)

鼻を使って相手の鼻に軽く触れるような行動は、モルモット同士の挨拶です。

引用:モルモット・チンチラ・デグーの医学.緑書房

掘る (Digging: ディグイング)

興奮や脱出の試みに床を掘る行動です。

ポップコーニング (Popcorning)

興奮した時の飛び跳ねるような走行をします。

ストレッチアウト (Stretching out)

後肢を後方に伸した状態で横になっているのは、リラックスして快適に過ごしている時に見られます。

なめる (Licking: リッキング)

相手の注意を引いたり、愛情を示し、快適さを求める時に、人や他の仲間をなめることをします。

前肢の硬化 (Leg stiffening: レッグスティファニング)

両前肢は硬くして立ち上がり、捕食者に対して自分がより大きく、より脅威的に見えるような誇示姿勢です。

後肢で立つ (Standing on hind legs: スタンディング オン ハインドレッグス)

周辺を探索する行動で、外敵を探索する時に見られますが、飼い主に餌やケージから出して欲しい要求をする時にも見られます。

アラートスタンス (Alert stance)

頭を前に伸ばし、注意深く、必要に応じて走って逃げる準備をしている警戒姿勢です。

咬む (Biting)

優位性を示したり、威嚇や攻撃の際に相手を咬みます。

ルンバ (Rumba)

後肢の揺れは性的関心を示すために見られます。

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鳴き声による意思表示

モルモットは基本的に温和でおとなしい性格ですが、飼い主や仲間に対してはよく鳴いて意思表示をします。モルモットは比較的聴力が良く、鳴き声は犬や猫ほど大きくないですが、種類が豊富です。その鳴き声の大きさやトーン、また行動とともにモルモットの気持ちを理解することができます。一般的には甲高い長い声は機嫌のいい時、低い声は警戒している時に多く聞かれます。以下のような鳴き声が解説されています 〔Berryman. 1976.〕。

表現鳴き声
ポジディブな表現Wheeking (ウィーキング)
Rumbling (ランブリング)
Chutting (チャッテング)
ネガディブな表現Rumbling (高いピッチのランブリング)
Teeth Chattering (ティースチャタリング)
Whining (ワイニング)
Hissig (ヒスィング)
Shrieking (シュリーキング)
性行動Courtship call (コートシップコール)
Grunting (グランティング)
Cooing (クーイング)
意味不明Chirping (チアーピング)
表: モルモットの鳴き声の種類

Wheeking (ウィーキング: 喘ぎ声)

最も一般的なモルモットの鳴き声で、”幸せ”や”喜び”を意味します。空腹で餌をねだる時やケージから出して欲しい時などにも発せられます。「キュイーキュイー」「プーイプーイ」という甲高い呼びかけのような声です。Weeping (ウイーピング: 泣き声) やWhistling (ウィスリング: 口笛) とも呼ばれ、これはペットのモルモットだけが鳴く可能性があり、野生のモルモットは自分で餌を見つけるため、鳴き声を出すことはほとんどありません。

Rumbling (ランブリング: ゴロゴロと喉を鳴らす)

猫が喉を鳴らすような音で、”満足”と”幸福”を意味します。撫でられて気持ちが良いと感じた時、または求愛時にも発せられます 〔Berryman 1976〕。「ゴロゴロ」「グルルルル〜」と低い声で、Purring (ピュアリング)とも呼ばれています。ただし、高いピッチの鳴き声であった場合は不快の兆候の可能性があります。

Chutting (チャティング)

”幸せ”を感じてリラックスしていると、つぶやくように小さな声で「チャッチャッ」「ピポビポ」と立て続けに鳴きます。Muttering (マッタリング)とも呼ばれています。どういうわけか、特定の個体だけが出す鳴き声です。

Teeth Chattering (ティースチャタリング:歯ぎしり)

チャタリングとは、モルモットが歯をかみ合わせたときに鳴る音で、鳴き声ではありません。一般的に”不快感”や”不安”を意味し、「カチカチ」「カリカリ」と低い音です。近づかないで欲しいという意思表示でもあり、脅威または攻撃性を示し、仲間同士の喧嘩や威嚇で発し 〔Berryman 1976〕、Teeth clatter (テイースクラッター), Clacking (クラッキング)とも呼ばれています。

Hissig(ヒスィング)

シューという音で、猫の威嚇音に似ています。Teeth Chattering(ティースチャタリング)と同じく喧嘩や威嚇で発します。

Whining (ワイニング: 泣き言)

危険や警戒、恐怖を知らせるための鳴き声で、「これは好きじゃない」という拒否の意味です。モルモットを抱っこ時や病気で痛みを感じた時などに発し、少し低めの音で「キュルキュル」あるいは「グルル~」「グルルル」と鳴きます。

Shrieking (シュリーキング: 叫び声)

警戒や興奮、恐怖、怒りの感情の鳴き声で、疼痛などがある時にも発します。非常に大きな音で、きしむ音でれ、「キーキー」「キューキュー」と甲高く鳴きます。ウィーキングと似た鳴き声ですが、ボディーランゲージならびに行動で判断します。Squealing (スクイ―リング: 金切声)とも呼ばれています。

Courtship call (コートシップコール:求愛音)

オスとメスで飼育している場合、求愛の目的で「ルルルル~」「グルルル~」と高めの音で鳴きます。特にオスは「ゴロゴロ」と鳴きます 〔Verzola-Olivio et al.2021〕。

Grunting (グランティング:うなり声)

”交尾の際の興奮”で発する鳴き声で、「ブーブー」低いうなり声です。

Cooing (クーイング: ささやき)

母親が子が怖がっている場合に”慰さめ”、または他の同居個体を”安心させる”目的で発す声です。低くて静かな音で、「クークー」と優しい声でささやいたり、優しく語りかけるような鳴き声です。

Chirping (チアーピング: さえずり)

モルモットが発する音の中で理解されていない鳴き声です。鳥の鳴き声のような高音で繰り返すさえずりは発するモルモットは、トランス状態にあるように見えることもあります。この歌のようなさえずりの意味は多くの議論の対象であり、確固たる結論はありません

仕草と鳴き声で判断

行動と鳴き声から総合的にモルモットの意思を読み取ってあげましょう。

モルモット同士の挨拶

相手の臀部の臭腺 (上尾部腺) をかいだり、鼻をつきあわせて(ノーズタッチング)、いわゆる挨拶をします。

嬉しくて喜んでいる時

撫でていると飼い主の手を舐めたり、「ゴロゴロ」「グルルルル〜」と喉を鳴らす声 (ランブリング) や「キュルキュル」「クッククック」と小刻みに小さな声で鳴きます。機嫌が良い幼体は体をひねってポップコーニングがみられ、この動きをポップコーンジャンプと言います。

引用:モルモット・チンチラ・デグーの医学.緑書房

空腹の時

飼い主に向かって後肢で立ってケージにつかまり、最初は「キュルキュル」「クッククック」と小刻みに小さな声で鳴きますが、そのうち「キュイーキュイー」「プーイプーイ」と甲高い声で空腹を訴えかけてきます。ケージの金網をかんでガタガタと音を出して知らせるモルモットもいます。

かまって欲しい時

餌を要求したり、撫でて欲しい、外に出して欲しい時に、つまり要求をかなえて欲しい時は、そのうち「キュイーキュイー」「プーイプーイ」と甲高い声 (ウィーキング)で鳴きながら空腹を訴えかけてきます。

リラックスしている時

体を横にして、四肢を伸ばして休んでいます (ストレッチアウト)。あくびをしたり、毛づくろいもします。

驚いた時

突然にダッシュして、物陰やケージの後ろ、小屋などに隠れます。

警戒して怯えている時

小屋や物陰に隠れて出てきません。目は大きく開いて、じっとしています。体毛を逆立てて、歯をカチカチと鳴らします(ティースチャタリング)。低い声でグルグル鳴いたり、恐怖の極致に至ると「キーキー」「キューキュー」と甲高く鳴きます(シュリーキング)。

怒って威嚇している時

口を大きく開けて歯を見せ、歯をカチカチと鳴らし (ティースチャタリング)、低い声でグルグル鳴きます。「キーキー」「キューキュー」と甲高くい声 (シュリーキング)で鳴きます。触ると手を押し返されたり頭突きをしたり、人の手を振り払われます。小屋や餌容器までもが鼻先で押しのけられることもあります。

喧嘩をする時

口を大きく開けて歯を見せ、目を大きく見開いています。毛を立てて、耳も立てます。前肢を立てて (肢の硬結化:Leg stiffening)、攻撃の意志を見せます。「キーキー」「キューキュー」と甲高く鳴くこともあります (シュリーキング)。

パニックな時

パニックになると、頭を前に伸ばし、注意深く、必要に応じて走って逃げる準備をして示し (アラートスタンス) 、必要に応じて走って逃げる準備をします。パニック時に体に触れることで驚いて、「キュルキュル」「グルル~」「グルルル」 と低い声(ワイニング)、あるいは「キーキー」「キューキュー」 と甲高い声(シュリーキング)で鳴きながら逃げ出します。

交尾したい時

オスはメスの陰部の臭腺 (会陰腺) の臭いをかいで追いかけ回し、メスはルンバ (Rumba)が見られ、雌雄ともに「ルルルル~」「グルルル~」と高めの音鳴く声は、求愛音(Courtship call)です。

慣らす方法とアプローチ

モルモットは一般的に穏やかな性格で、挑発されない限り引っかいたり咬んだりすることはありません。しかし、それぞれに個性があり、人見知りや神経質な個体では注意を払って下さい。

モルモットは簡単にストレスを受けて、病気になることもあります。人見知りや神経質な個体を扱う時には、ゆっくりと近づき、静かに話しかけることが重要です。ケージの中に手を置いて静かで穏やかな声で話しているところから始まります。これは、数日続けて繰り返す必要があります。モルモットがより信頼できるようになるにつれて、好まれる野菜のおやつは手で与えられるかもしれません。取り扱いに慣れていないモルモットは、後ろから近づくと走る可能性があります。モルモットがケージ内の手に慣れたら、頭と鼻の上部を優しく撫で始めます。多くのモルモットは、耳の後ろを引っかいたり、あごの下を1本の指で撫でたりするのを好みます。前肢の後ろの胴体をつかみ、もう一方の手で後部をすくい上げて支えてモルモットを持ち上げます。また、モルモットは高い机などに置いた時に、端を認識する感覚がほとんどなく、突然走り出して地面に落ちる可能性がありますので、注意して下さい。

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参考文献

  • Bradley TA.Normal behavior and the clinical implications of abnormal behavior in guinea pigs.Vet Clin North Am Exot Anim Pract. 4(3):681-696.2001
  • Berryman JC.Guinea pig vocalizations:their structure,causation and function.Z Tierpsychol41:80-106.1976
  • Harper LV.Behaveor.In The biology of the guinea pig.Wagner JE,Manning PJ eds.Academic Press.New York.1976
  • Verzola-Olivio P et al.Guinea pig’s courtship call:cues for identity and male dominance status? Anim Behav174:237-247.2021

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。