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繁殖は難しい
現在プレーリードッグは海外から輸入できないために、国内で流通しているものは繁殖された個体です。繁殖は難しく〔Hoogland 1983〕、プレーリードッグを増やすことは至難の業となります。そのために販売されているものは、かなり高額で取引きされています。流通している数も少ないために、いくらお金を出す気でいても数が少ないために買うことができない状態になっています。
雄雌鑑別
雌雄は生殖孔と肛門の距離で鑑別します。オスはメスと比べで生殖孔と肛門の距離が長いです。
プレーリードッグは季節繁殖動物で、発情時になると外部生殖器も発達し、特有の行動が見られます。発情したオスは精巣が発達して下降するため、陰嚢が膨らみます。
メスは生殖孔(外陰部)と肛門の距離が短いですが、あまりオスとの差が明確でありません。
発情したメスは外陰部が充血して、腫れてきます。
繁殖
プレーリードッグのコテリーの家族ではリーダーである1頭のオスに複数のメスからなり、コテリー内では全てリーダーの子が繁殖します。メスは子育てに励み、オスは縄張りであるコテリーを守り、巣穴を維持することによって自分の役割を果たしています。プレーリードッグは繁殖できる季節を持つ季節繁殖動物です。春先に繁殖期を迎え発情をします。
性成熟
性成熟は15ヵ月〔King 1995〕~2年〔Hoogland 1995〕を要し、性的な成熟を迎えるとオスは精子が作れるようになり、メスは子供を作れる体になります。
発情
発情期は2月以降に見られ、4月位まで続きます。日本で飼育されているプレーリードッグでは11月頃から発情が始まることが多いです。発情期になると上述したような外部生殖器と性格の変化がみられます。行動の変化として、オスもメスも気性が荒くなり、特にオスのプレーリードッグは狂暴化して鳴き叫び、飼い主が触れないほど攻撃的になることがあります。また、エサを食べる量も減ります。
発情期の間はあまり構わずにそっとしてあげましょう。下手に手を出すと、オスでは大怪我をするほどかまれます。発情したメスも気性が荒くなり、2~3週間の周期で発情が繰り返し起こります〔Koford 1958〕。発情すると外陰部は赤色を帯びて腫大しています。
交配
交配はまずお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつで行いますが、メスの2~3週間の中で約1日だけ許容が起こりますので〔Hoogland 2001〕、タイミングが難しいです。それぞれのケージを並べて、お互いの匂いをかがせて、存在を意識させます。慣れてきたらメスをオスのケージに入れて交尾させます(オスをメスのケージに入れると、メスがオスを攻撃する可能性が高いです)。メスはオスを気にいると、ロードシス(Lordosis)と呼ばれる尾を上げた姿勢がみられます。これは交尾を許容しているのです。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。
確実に妊娠させたい場合は、数日以内にもう一度交配をさせて下さい。
妊娠・出産
妊娠期間は34~35日です〔Hoogland 1995〕。妊娠診断は動物病院で、触診、レントゲン検査やエコー検査で行います。妊娠した子供の数によりますが、後半になるとお腹が大きくなってきます。この時期に巣箱の用意をします。妊娠中のプレーリードッグには栄養価の高いエサが必要になりますので、ペレットは繁殖期用のものに変えるとよいでしょう。出産が近づくと、巣箱に牧草を運んで、巣を作り始めます(営巣)。想像妊娠が起こることもあり、発情行動や営巣が頻繁に見られ、乳腺が腫って母乳が出てきます。産子数は2~10頭です〔Johnson-Delaney 2002〕。
赤子・子育て
新生子は赤子で生まれ、目も耳も閉じた状態です。2~3日齢で毛が生え始め、開眼は10日齢くらいからです。絶対に赤子には触れないで下さい。触ると人の匂いがついて、母親が育子放棄をすることがあります。野生でのコテリー内での他のメスの子も共同して保育をするのかは分かっていません〔Chance et al.1976〕。少量ずつ餌を自ら摂り始めますが、消化機能が完全に発達するのは5週齢以降で、完全な離乳は6週齢以降が理想です。子が6週齢までは地下巢で過ごし、その後に巢穴か出て活動します〔Pilny et al.2004〕 。乳頭は4対(8個)あります。
子育ては母親だけで行いますので、安心して子育てできるような環境や餌の管理を行ってください。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして静かにしましょう。掃除も毎日やると母親にストレスを与えるので、出産前にきちんとして、しばらくは最低限の掃除にして下さい。
性成熟 | 15ヵ月 〔King 1995〕-2年〔Hoogland 1995〕 |
繁殖形式 | 季節繁殖(2-4月)〔Koford 1958〕 発情期間 2-3週間 |
妊娠期間 | 34-35日〔Hoogland 1995〕 |
産子数 | 2-10頭〔Johnson-Delaney 2002〕 |
離乳 | 約6週齢 |
これがポイント!
・春に発情を迎える季節繁殖動物
・繁殖期のみに生殖器が大きくなる
・繁殖期は気が荒くなるので、特にオスでは触れないこともある
・繁殖は簡単ではない
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参考文献
- Chance GE.Wonders of Prairie Dogs.Dodd,Mead,and Company.New York.1976
- Crosby L,Graham R.Population dynamics and expansion rates of black-tailed prairie dogs.In Proceedings,twelfth vertebrate pest conference.Salmon TP.ed.University of California.California:p112-115.1986
- Hoogland JL.The Black-Tailed Prairie Dog.Social Life of a Burrowing Mammal.The University of Chicago Press.Chicago.S.1995
- Hoogland JL.Black-tailed, Gunnison’s, and Utah prairie dogs reproduce slowly. J Mammal82:917–92.2001
- Hoogland JL.Black-Tailed Prairie Dog Coteries are Cooperatively Breeding Units. The American Naturalist121 (2):275–280.1983
- Johnson-Delaney CA.Other small mammals.In BSAVA Manual of Exotic Pets 4th ed. Meredith A,Redrobe S.eds.British Small Animal Veterinary Association Gloucester:p102-115.2002
- Kartman L,Quan SF,Lechleitner RR.Die-off of a Gunnison’s prairie dog colony in central Colorado.II.Retrospective determination of plague infection in flea vectors, rodents,and man. Zoonoses Res 1:p201-224.1962
- King JA.Social behavior, social organization, and population dynamics in a black-tailed prairie dog town in the Black Hills of South Dakota.In Contributions from the Laboratory of Vertebrate Biology 67.University of Michigan.Ann Arbor.Michigan:p123.1955
- Pilny A,Laurie H.Prairie dog care and husbandry.Veterinary Clinics of North America:Exotic Animal Practice7 (2).269‐282.2004
- La Regina M,Lonigro J,Wallace M.Francisella tularensis infection in captive,wild-caught prairie dogs.Lab Anim Sci36:p178-180.1986
- Stevenson HL,Bai Y,Kosoy MY,Montenieri JA,Lowell JL,Chu MC,Gage KL.Detection of novel Bartonella strains and Yersinia pestis in prairie dogs and their fleas (Siphonaptera: Ceratophyllidae and Pulicidae) using multiplex polymerase chain reaction.J Med Entomol40:p329-337.2003
- Varela G,Vazquez A.Finding of sylvatic plague in the Republic of Mexico; natural infection of Cynomys mexicanus (prairie dogs) with Pasteurella pestis.Rev Inst Salubr Enferm Trop14:p219-223.1954