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草原の犬
プレーリードッグとジリスと同じ地上で生活をするリスの仲間です。他の樹上で生活するリスと比べて、尾が短くて寸胴な体型をしていること、社会性が高く、集団でいることが共通した特徴です。
警戒心が強く、プレーリードッグは危険を察知した際などは、遠くをみるために後肢で立ち上がる姿が有名です。
分類・生態
プレーリードッグはネズミ目リス科プレーリードッグ属の動物の総称で、全種類が北米に生息しています。ネズミの仲間ですが、草原(プレーリー)に住んで、犬(ドッグ)のような鳴き声をしていることから、プレーリードッグ(草原の犬)と命名されました。プレーリードッグには、オグロプレーリードック、オジロプレーリードッグ、ユタプレーリードッグ、メキシコプレーリードッグ、ガニソンプレーリードッグの5種類が知られ、外見上は似ています。特にオグロプレーリードッグは分布域が広くて個体の数も多いため、必然的にペットとしても数多く飼育されています。
ネズミ目(げっ歯目) | リス科 | プレーリードッグ属 | オグロプレーリードッグ |
オジロプレーリードッグ | |||
メキシコプレーリードッグ | |||
ガニソンプレーリードッグ | |||
ユタプレーリードッグ |
プレーリードッグで、可愛らしい姿から人気があり、一時期はペットとして大量に輸入されていました。しかし、人獣共通感染症であるペスト〔Kartman et al.1962, Stevenson et al.2003, Varela et al.1954〕や野兎病〔La Regina et al.1986〕などの感染症を媒介することが懸念され、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に基づき、2003 年から輸入が禁止されました。現在、日本国内で販売されているペットのオグロプレーリードッグは国内繁殖したものです。ただし、これらの感染症はプレーリードッグに感染しても、発症や死亡に至るまで長くとも数週間であることが分かり、2008年8月にアメリカの食品医薬品局にて輸出禁止を解除する方針が示されました。ただし、日本への輸入に関しては、未だ禁止の状態が続いています。
分類
ネズミ目(げっ歯目)リス科プレーリードッグ属
学名:Cynomys ludovicianus
英名:Black-tailed prairie dog
分布
北アメリカ大陸中西部(南はテキサス州 から北はアメリカ合衆国とカナダとの国境付近まで)
生態
環境
・主に海抜2,000〜10,000フィートの高緯度域
・グレートプレーンズと呼ばれる草原乾燥地帯/ 夏には38°C、冬には−37 °Cなる寒暖差が激しい気候です。
行動
・巣穴を掘って、群れで生活しています。昼行性であるため、昼は暑さを避けて、朝と夕方に活発に活動をします。
・生息地は、嵐、吹雪、洪水、干ばつなどの脅威が発生しやすい地域なため、巣穴は重要です。<・巣穴は、長さ5~10m、地下2~3mで、出入口は約直径10~30cmの穴ですが、複数の穴を持つことがあります〔Hoogland 1995〕。
・出入口の穴の周囲は基本的に平らですが、クレーターのように穴の周囲に盛り土がされている穴もあり、これは外敵を監視するために使用されたり〔Hoogland 1995〕、洪水からの保護、換気など提供します〔Chance 1976〕。・出入口穴平らな穴だったり、クレーターのように穴の周囲に盛り土がされており、外敵を監視するために使用されたり〔Hoogland 1995〕、洪水からの保護、換気など提供します〔Chance 1976〕。
・巣穴の中には、寝室、食料貯蔵庫、トイレ、育子室などを設けています〔Chance 1976〕。
・草原では巣穴の見張り台で、交代で見張りをたてています。巣穴の周囲を見張り役が警戒して、コヨーテやアナグマなどの天敵が近づくと、キャンキャンと警告音で鳴いて敵の存在を仲間に知らせます。この鳴き声を聞くと、仲間は皆一斉に巣穴に逃げ込んでいきます。
・群れは、オス1頭に対して3~4頭のメスとそれらの子供で構成されるコテリー(Coterie)と呼ばれる家族単位になっています。
コテリーが集まってワード(Ward)という縄ばりをつくり、さらにいくつかのワードも集まり、まるで一つの町のようであるためタウン(Town)と呼ばれています〔Crosby et al.1986〕。
食性:草食性で、植物の葉、茎、根、実や種子、時に草についていた昆虫などを食べています。
寿命:野生では3~6年(飼育下では8年以上の長寿の個体も増えています)。
身体
頭胴長:オス 38.8(35.8~42.9)cm、メス 37.1(34.0~40.0)cm
尾長:7.5~10cm
体重:オス 907(575~1490)g、メス 863(765~1030)g
毛色:背中は茶褐色で、腹側は黄褐色~白色です。
尾の先端約1/3は名前の通り黒色です。
品種
背中の茶褐色の濃淡でいくつかの毛色がいますが、明確な品種の定義はされていません。しかし、アルビノやホワイトなどが時に流通しています。
ホワイトプレーリードッグ
全身の毛色が白色で、目は黒目です。しかし、白色には幅があり、純白~薄いクリームをしており、薄茶色の斑が入ることもあります。
これがポイント!(分類・ 生態)
・プレーリードッグは草原の犬という意味だが、げっ歯類にの仲間
・5種類に分かれおり、ペットはオグロプレーリードッグのみ
・原産は北米であるが、日本への輸入禁止
・日本国内のペットは繁殖個体が流通
・群れで暮らしており、愛情深い動物
・昼行性、完全草食動物
習性・性格
昼行性
昼行性ですが、ペットでは人の生活に合わせることが多いです。巣穴を掘るために、床を掘ったり、潜る習性があります。そして、物をかじる習性も強く、ケージや部屋の中で様々な物が壊されることがあるので、注意して下さい。
喜怒哀楽が激しい
性格は喜怒哀楽がはっきりとしています。活動的でありながら、一方では寂しがりやで、警戒心も強い面も持っています。
コミニュケーション
群れで生活しているため、社交性豊で仲間思いです。馴れると人なつこく、甘えてきますが、飼い主以外の見知らぬ相手には攻撃的になることもあります。オグロプレーリードッグは、ボディランケージでコミュニケーションを取ろうとします。愛情を表現する時、面白そうな物を見つけて興味をもった時、驚いて怯えた時、興奮した時など、それぞれの表現があります。
キッシング
個体同士でのコミュニケーションをとる行動が見られます。鼻先をつけたり、キスをするような行為は、キッシング(Kissing)と呼ばれ、フェロモンの臭いで相手を認識しています。つまり挨拶みたいなものです。家族内で行う行為で、他の家族グループの個体とは基本的には行いません〔Chance 1976〕。
アラームコール
嫌なことをされたり、嫌いな人が近づくと、口を開けて前歯をむき出しにして、「キャンキャン」と鳴きさけびます。これは警戒音(アラームコール:Alarm call)と呼ばれ、群れの中で天敵が進入した際に、仲間に危険を知らせるためです。つまり驚いて興奮したり、威嚇している時です〔Johnson-Delaney 2002〕。プレーリードッグは外敵に対して、色覚で検出・鑑別を行うことができます。そして外敵がコヨーテや猛禽類の何であるか、どのくらいの大きさであり、どのくらいの速さで近づいているか、文法を伴て警告音を使い分けて発していると言われています〔Slobodchikoff 2002,Slobodchikoff et al.2009〕。
チャタリング
警戒や威嚇の表示として、被毛を逆立てて尾を膨らませ、カチカチと歯を鳴らす(チャタリング:chattering)こともあります。つまり、おびえている時です。警戒や威嚇の表示として、被毛を逆立てて尾を膨らませ、カチカチと歯を鳴らすこともあります。つまり、おびえている時です。
ジャンプイップ
前足を上に向けて、高く身体を伸ばして、「ウキュー」と甲高い声を発する(ジャンプイップ:Jump-yip)ことがあります。これは天敵が縄ばりから出ていった際の仲間への呼びかけと言われていますが、飼育下では嬉しい時にみられます〔King 1995,Hoogland 1995〕。
冬眠
標高の高い高地に生息するユタプレーリードッグ、オジロプレーリードッグ、ガニソンプレーリードッグは冬眠をしますが、オグロプレーリードッグ、メキシコプレーリードッグは冬眠をしません。ただし、オグロプレーリードッグも過酷な寒い環境におくと休眠することがあります。
特徴
寸胴短足
地上ないし巣穴で生活をするため、身体は寸胴で四肢も短いです。耳は小さく、体に密着しています。地下の巣に容易に潜れるためです。
趾
趾の数は四肢ともに5本で、地面を掘るために鋭く長い鉤爪をしています。
常生歯
歯は切歯と臼歯があり、全部で22本で、特に切歯は大きくて鋭く、硬いものもかじります。切歯のみが常生歯で、生涯にわたり伸び続けますが、臼歯は伸びません。また、切歯の表面は黄褐色をしていますが、これは虫歯ではなく、体内のミネラルが沈着しているからです。
肛門腺
興奮すると肛門周囲の3本の肛門腺を突出させ、分泌物を放散しますが、人がこの臭いを悪臭だと感じることはあまりありません。
体臭は特有の草のような芳香臭があります。
これがポイント!(特徴)
・人にべた馴れする
・喜怒哀楽がはっきりした性格で、キャンキャンと鳴き叫ぶ
・寸胴で手足が短い
・噛む力が強い
・切歯のみが伸び続ける常生歯
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参考文献
- Crosby L,Graham R.Population dynamics and expansion rates of black-tailed prairie dogs.In Proceedings,twelfth vertebrate pest conference.Salmon TP.ed.University of California.California:p112-115.1986
- Chance GE.Wonders of Prairie Dogs. Dodd, Mead, and Company.New York.1976
- Hoogland JL.The Black- tailed Prairie Dog: Social Life of a Burrowing Mammal,The University of Chicago Press.Chicago.IL.1995
- Johnson-Delaney CA.Other small mammals.In BSAVA Manual of Exotic Pets 4th ed.Meredith A,Redrobe S.eds.British Small Animal Veterinary Association Gloucester: p102-115.2002
- Kartman L,Quan SF,Lechleitner RR.Die-off of a Gunnison’s prairie dog colony in central Colorado.II.Retrospective determination of plague infection in flea vectors,rodents,and man. Zoonoses Res 1:p201-224.1962
- King JA.Social behavior,social organization, and population dynamics in a black-tailed prairie dog town in the Black Hills of South Dakota.In Contributions from the Laboratory of Vertebrate Biology67.University of Michigan.Ann Arbor.Michigan:p123.1955
- La Regina M,Lonigro J,Wallace M.Francisella tularensis infection in captive,wild-caught prairie dogs.Lab Anim Sci36:p178-180.1986
- Slobodchikoff CN.Cognition and communication in prairie dogs.In The cognitive animal.MIT Press.Bekoff M,Allen C,Burghardt GM eds.Cambridge:p257–264.2002
- Slobodchikoff CN et al.Prairie dog alarm calls encode labels about predator colors.Anim Cogn12(3):435-9.2009
- Stevenson HL,Bai Y,Kosoy MY,Montenieri JA,Lowell JL,Chu MC,Gage KL.Detection of novel Bartonella strains and Yersinia pestis in prairie dogs and their fleas (Siphonaptera: Ceratophyllidae and Pulicidae) using multiplex polymerase chain reaction.J Med Entomol40:p329-337.2003
- Varela G,Vazquez A.Finding of sylvatic plague in the Republic of Mexico;natural infection of Cynomys mexicanus(prairie dogs)with Pasteurella pestis.Rev Inst Salubr Enferm Trop14:p219-223.1954