フェレットの雌雄鑑別と繁殖(素人による繁殖は禁忌)

雌雄鑑別

フェレットの雌雄鑑別は容易です。

オス

オスは生殖孔 と肛門の距離が長く、陰嚢は明瞭です。しかし、通常に販売されているフェレットは去勢手術がされているので、陰嚢が目立ちません。包皮の上から触わると陰茎骨が分かります。

メス

メスは生殖穴 (外陰部) と肛門の距離が短く、外陰部がスリット状に開口しています。

繁殖

フェレットは繁殖かできる季節が決まっている季節繁殖動物です。繁殖は発情時に対しての適確な処置が必要となります。素人にはとても難しいので、あまりお薦めできません。もし自宅で繁殖する場合は去勢・避妊手術を受けていない精巣と卵巣が残っているフェレットを特別に注文してください。精巣が残っているオスは体臭がきつく、メスは発情すると自らの女性ホルモンの過剰分泌に起因してエストロゲン中毒になるので、交尾させる必要があります。

性成熟

生まれた翌年の春あるいは8~12ヵ月齢 〔Plant et al.2010〕 で性的な成熟を迎え、オスは精子が作れるようになり、メスは子を出産できる体になります。

発情

発情は日が長い時に迎え、北半球では3〜8月になります。フェレットの繁殖場 (ファーム) では、光周期をコントロールすることで、年中繁殖が可能になっています。発情したオスは興奮して、マーキングのために縄ばり内に尿を飛ばしたりします。発情したメスは外陰部が赤くドーナツ状に腫脹し、透明の粘液性の分泌物が排泄されます。発情後約1ヵ月で外陰部は最大に腫脹します 〔Marshall et al.1945〕。

フェレット陰部腫大

交尾を行わないと発情した状態が約120日間続き 〔Donovan 1967〕、その結果、エストロゲン中毒が引き起こされることが多く、死亡することもあります。フェレットは交尾によって排卵動物です。交尾後30~40時間に排卵しますが、交尾しないと発情が持続し、卵巣から分泌されるエストロゲンが脱毛や貧血を引き起します。

交配

繁殖を行う場合には、外陰部が腫脹してから約14日くらい経過した発情したメスをオスのケージに入れます 〔Fox, 1988〕。ケージに入れる前に、まずお見合いをさせてください。それぞれのケージを並べて、お互いの匂いをかがせて、存在を意識させます。慣れてきたらメスをオスのケージに入れます (オスをメスのケージに入れると、メスがオスを攻撃する可能性が高いので、注意して下さい)。フェレットの交尾は激しいことで有名で、オスがメスを抑えこんだり、首の背中をかんだります。

交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。交尾時間は長く、3時間以内もかかることもあります (平均1時間)。交尾が上手くいくと排卵して発情がおさまり、腫大した外陰部は2~3週くらいで小さくなります。外陰部の縮小がなければ、交尾がうまくいっていないので、再度交尾を試みます。交尾をしない場合は別の日に再び行ってください。相性が悪い場合はペアの組み合わせを変えます。交尾後はオスとメスは別々のケージに戻します。

妊娠・出産

妊娠期間は約42日です 〔Plant et al.2010〕。妊娠診断は動物病院で、触診、レントゲン検査やエコー検査で行います。妊娠した子供の数によりますが、後半になると腹囲が膨大します。妊娠中のフェレットには栄養価の高い餌が必要になりますので、ペレットは高カロリーのものに変えるとよいでしょう。想像妊娠が起こることもあり、発情行動や営巣が頻繁にみられ、乳腺が腫って母乳が出てきます。

出産

出産が近づくと、巣箱に巣を作り始めるので、柔らかい布などを与えてください。自ら巣箱に巣材として敷き詰めます(営巣)。産まれてくる子供の数は、およそ8頭 (1〜18頭) です 〔Plant et al.2010〕。

赤子・子育て

新生子は赤子で生まれ、目も耳も閉じた状態です。2~3日齢で毛が生え始め、目が開くのは2~3週齢になります。3週齢からは巣から出て遊び始めます。4週齢からは少量ずつ餌を自ら摂り始めますが、完全な離乳は6~8週齢以降が理想です 〔Fox 1988〕。

子育ては母フェレットだけで行いますので、母フェレットが安心して子育てできるような環境や食事の管理を行ってください。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして、静かにしましょう。掃除も毎日やると母フェレットにストレスを与えるので、出産前にきちんとして、しばらくは最低限の掃除にして下さい。

乳子の歯は乳歯ですが、少しづつ永久歯に生え変わります。この生え変わりの時は、歯が痒いので物を噛んだり、齧り癖もあります。完全に永久歯に生え変わるのは2.5カ月齢ほどかかります。

性成熟生まれた翌年の春あるいは約8-12ヵ月齢時 〔Plant et al. 2010〕
繁殖形式季節繁殖/多発情
発情期(北半球; 南半球では逆)
オス: 12-7月
メス: 3-8月
〔Plant et al.2010〕
妊娠期間42 ± 2日間 〔Plant et al.,2010〕
産子数8 (1-14) 頭 〔Plant et al.,2010〕
離乳6-8週齢 〔Fox 1988〕
表: フェレットの繁殖知識

フェレットのこともっと詳しく書いてある本はコレ!

フェレット 飼育バイブル 長く元気に暮らす50のポイント (コツがわかる本!) .メイツ出版

参考文献

  • Brown SA.Basic anatomy,physiology, and husbandry.In Ferrets,Rabbits,and Rodents Clinical Medicine and Surgery.Hillyer EV & Quesenberry KE.eds.WB Saunders.Philadelphia:3-13.1977
  • Fox JG. ed.Donovan BT.Light and the control of the estrous cycle in the ferret.J Endocrinol39(1):105-113.1967
  • Fox JG.Reproduction,breeding,and growth.In Biology and Disease of the Ferret.Lea & Febiger.Philadelphia:174-185.1988
  • Plant M,Lloyd M.The ferret. In Hubrecht R & Kirkwood J.eds.The UFAW Handbook on the Care and Management of Laboratory and Other Research Animals 8th ed.Wiley-Blackwell.Oxford:418-431.2010
  • Marshall FHA,Hammond JA.Experimental control of hormone action of the estrus cycle in the ferret.J Endocrinol4(4):159-168.1944

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。