アスコルビナーゼって
野菜や果物はビタミンC(アスコルビン酸)のよい給源ですが、アスコルビン酸は非常に酸化されて破壊されやすく、調理の際の損失がかなり大 きことを考慮しなければならないと考えられてきました。そして、アスコルビナーゼと呼ばれる酵素は、ニンジン、キュウリ、バナナ、リンゴ、カボチャなどの一部の果物・野菜に含まれており、ビタミンCを破壊する酵素といわれています〔稲垣ら 1954c,稲垣ら 1954d〕。つまり、ビタミンCを含む他の食品とジュースなどで混ぜた場合はビタミンCを壊すことになり、モルモットではビタミンC欠乏症を引き起こすとも言われてきました。一方でアスコルビナーゼの活性は熱やpHの影響を課題に受けることも知られています。50~60℃で活性が酵素の活性が抑えられ、70℃以降ではほとんど酸化されていないません。また、pH3~4、pH12~13ではビタミンCがほとんど酸化されていないことから、pHが中性で酵素は活性します〔辻村2003〕。
破壊するのか?
ビタミンCは加熱すると空気中の酸素や水分との反応が促進され、酸化されてデヒドロアスコルビン酸となり、さらに加水分解されたジケトグロン酸へ分解しやすくなります。デヒドロアスコルビン酸は人体内でアスコルビン酸に還元され利用されますが、ジケトグロン酸にはビタミンCのような生理活性はないとされています。
アスコルビン酸はアスコルビナーゼで破壊されているのではなく、酸化されているだけです。アスコル ビン酸をアスコルビナーゼを含むニンジンなどと混ぜるとただちに酸化されデヒドロアスコルビン酸となりますが、デヒドロアスコルビン酸としてかなり長時間安定で残存します。摂取したアスコルビン酸は体内でも酸化されていますが、状況に応じて還元型に戻ります。実際にどちらを摂取しても人体ではほとんど還元型として存在することが実験で証明されています。そのため、食品中のビタミンCは、L‐アスコルビン酸(還元型ビタミンC)とL‐デヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)として存在する。その効力値については、科学技術庁資源調査会からの問い合わせに対する日本ビタミン学会ビタミンC研究委員会の見解(昭和51年2月)に基づき同等とみなされるとされ、還元型と酸化型を合わせた総量(総ビタミンC)をビタミンC量として示しています〔五訂日本食品標準成分表 〕。つまり、摂取前で還元型 アスコルビン酸 が多くても、酸化型アスコルビン酸が多くても、体内ではほとんど還元型アスコルビン酸C として存在するので効果としてはあまり変わらりません。ただし、空気中では酸化型アスコルビン酸は不安定になるため、長時間空気中に放置しておくと、酸化型アスコルビン酸が活性のないジケトグロン酸になり、その状態では破壊されたと言えます。
実際の投与方法
調理時におけるアスコルビン酸の変化とアスコルビナーゼとの関係については、過去に多数緒論が論議されてきました。
アスコルビン酸は熱に弱い?
アスコルビン酸の濃度が低いと不安定性は急速に増大し、高濃度であると比較的安定です〔稲垣 1943〕。さらに1%デンプン溶液中ではいっそう安定であ ったことから、液体よりも食品中ではより安定 であろ うと考えられます〔桐渕ら 1987〕。ただし、水溶性であるビタミンCは茹でるなどの加熱では茹で水に溶け出していくため、茹で時間が長いほど野菜中のビタミンC含量は低下することになります。水を使わない加熱調理やできるだけ短時間の茹で加熱が野菜のビタミンC保持に効果的です。
ジュースにした場合のアスコルビン酸の安定性
野菜 や果実 をジ ュースにした場合、食品の種類により、存在するアスコルビナーゼの作用を受け、アルコルビン酸の安定性の報告が数多く報告されている〔稲垣ら1954a,稲垣ら1954b,Inagaki et al.1955,大宝 1957,山崎ら1964〕。しかし、酸化型になっても総アスコルビン酸量には変化はないです。
まとめ
酸化されたアスコルビン酸も還元型と同等 みなすことから、総じて調理や調合による損失は極めて少ないといえます。つまり、アスコルビナーゼは還元型アスコルビン酸を酸化型アスコルビン酸にするだけで総ビタミンC の量は変化していないので、「ニンジンを一緒に食べるのはビタミンC が破壊されるのでよくない」という説は嘘だといえます。
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参考文献
- 稲垣長典.農化19.451.1943
- 稲垣長典,福場博保:お茶の水女大紀要4:235.1954a
- 稲垣長典,福場博保,松下アヤ子.お茶の水女大紀要5,92.1954b
- 稲垣長典,福場博保,榎本利子.栄養と食糧6:222.1954c
- 稲垣長典,福場博保, 榎本利子:栄養と食糧6:268.1954d
- 大宝明.栄養と食 糧9:25.1957
- 桐渕壽子、川嶋かほ.調理時におけるアスコルビン酸の変化.日本家政学会誌38(10):877‐887.1987
- 五訂日本食品標準成分表 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.ht